住宅ローンを利用する際に皆さんが頭を悩ませるのは、金利タイプを固定金利型と変動金利型のどちらにしたらよいのか、ということではないでしょうか。
また、すでに住宅ローンを利用されている方が借り換えの際に金利タイプを変更するのかも悩みどころですよね。
こちらでは、住宅ローンの固定金利と変動金利について、それぞれの金利がどのように決まるのか、そして各金利型のメリットについてご説明します。
固定金利型
住宅ローンの借入時の金利がその後も変わらないのが固定金利型です
借入の全期間同じ金利で固定されている全期間固定金利型と、借入の一定期間の金利を固定する固定期間選択型の2種類があります。
全期間固定金利型
全期間固定金利型は、その名前のとおり、住宅ローンを借り入れている期間ずっと金利が変わりません。
全期間固定金利型では、借入期間中の金利が変わりませんので、毎月の返済額も変化しません。
また、全期間固定金利型では、金利を固定している期間と借り入れをしている期間が同じになりますから、借り入れている住宅ローンの利用者が金利を変更したいと思った場合は同じ金融機関では金利の変更はできません。
この場合は、他の金融機関への住宅ローンの借り換えを検討することになります。
固定期間選択型(変動金利型の特約)
固定期間選択型(固定金利期間選択型)は、住宅ローンの借り始めから「3年固定」「10年固定」など一定期間の金利を固定するタイプのものです。
固定の期間は、金融機関によって異なり、2年、3年、5年、7年、10年、15年、20年、25年など色々あります。
実は固定期間選択型は、「変動金利型」の特約で一定期間の金利を固定しているもの(固定金利特約)で、住宅ローンの厳密な金利タイプ別では「変動金利型」に分けられるものと言えます。
ですが、住宅ローンを利用する方々のイメージでは、「固定金利型」と言われると一般にイメージされるものはこの固定期間選択型でしょうから、この記事ではあえて固定金利型の分類の方でご紹介しています。
先ほどご説明したように変動金利の一定期間を特約によって金利を固定していますので、固定期間選択型の特約期間(例.3年、10年など)が終了すると、特約の終了で自動的に変動金利へ移行します。
また、特約終了の際に住宅ローンの借り入れをしている金融機関の固定金利型を再度選択することも可能です。その際には特約の再設定の手数料がかかります。
この固定金利の特約では、住宅ローンの残っている返済期間を超えて固定金利の期間を指定することはできないので注意が必要です。
例えば、返済期間が残り4年である時に、5年固定は選択できないということです。この場合は、3年固定や変動金利型を選択することになります。
固定金利はどのように決まるのか?
さて、住宅ローンの固定金利に影響を与えるのは長期金利です。
長期金利の代表的なものとしては、新規に発行される償還期間10年の国債利回り(新発10年国債利回り)があります。
この長期金利ですが、どのように決まるかご存じでしょうか。
長期金利は、長期資金の需要と供給の市場メカニズムの中で決まり、それには将来の物価変動(インフレ、デフレ)や将来の短期金利の推移などの「予想」(期待)が重要です。
これはどういういことかと言いますと、まず、長期金利と債券「相場」には以下のような関係があります。
- 債券相場が値上がりすれば、長期金利は低下
- 債券相場が値下がりすれば、長期金利は上昇
債券相場が値上がりする、とは市場の皆が債券を買っている状態です。債券が市場で買われれば、債券の価格は上昇します。
債券に設定されている利率自体は債券が買われる前後で変わりがありませんから、債券の利回り自体は債券が買われて価格が上昇すると低下することになります。
この利回りが長期金利です。
債券が値下がりする場合は反対の動きになります。これが、「市場のメカニズム」と表現されている内容ですね。
さて、そうすると長期金利の動きを予想するのは、債券相場がどう動くかを予想することと同じ意味になりますが、債券相場の動きに影響するものが、将来の物価変動(インフレ、デフレ)や短期金利の推移、設備投資による収益といったものの「予想」になります。
例えば、人々(市場)の中で、これからはインフレになるとの予想が強くなると、長期金利は上昇します。
なぜなら、この場合、債券を保有していることで将来得られる利息よりも、インフレが進むことで例えば定期預金の利息の方が上回ることが予想されるため、人々は債券を売って、その資金を定期預金へと回すことが考えられます。
先ほど見た市場メカニズムにより、このように債券が売られれば、債券が値下がりしますので、長期金利は上昇します。
反対に、これからデフレが進むと予想が強くなれば、人々は定期預金を解約して、利回りが良い債券を購入しますから、債券価格は上昇し、長期金利は低下します。
かなり簡略化してご説明しましたが、こうした「予想」をもとに長期金利が決まっていく、ということなのです。
これは裏を返すと、長期金利の動きとは、こうした不確実な将来に関する「予想」によって影響を受けるため、長期金利の将来の動き自体を予想することは極めて難しいということもお分かりいただけるのではないでしょうか。
こうした長期金利の動向をもとに各金融機関が住宅ローンの固定金利を決めているのです。
固定金利型の選択のメリット
さて、ここまで読み進めていただくとお気づきの方もいらっしゃると思いますが、住宅ローンにおいて固定金利型を選ぶメリットは、文字通りこの金利を固定できることにあります。
先ほど見たように、市場の「予測」(期待)によって動きが左右される将来の、特に長期的な金利の動きは誰にも分からないというのが正直なところです。
長期的に金利は上がるかもしれないし、下がるかもしれない。常にどちらの可能性もあるわけです。
こうした予測不可能な状況で、あえて住宅ローンの金利を固定し、毎月の支払い額を確定させることは、利用者の方からすると、金利の上がり下がりに悩まされずに今後の生活プランを立てるうえで、非常に助かるはずですね。
特に、お子さんがいてこれからの教育プランなど、将来に向けた様々な出費を考慮しなければならないご家庭ですと、月々定額で住宅ローンの金額が把握できる意味は大きいでしょう。
さらに、全期間固定金利型を選択したのであれば、月々の支払金額だけでなく、住宅ローン全体の支払金額も確定させることができます。
住宅ローンの固定金利型の選択のメリットを一言で言うと、「将来の安心を買う」ということになります。
この固定金利のメリットを最大限に生かした住宅ローン商品が「フラット35」です。以下の記事で詳しくご説明しています。

変動金利型
変動金利型は、現在、民間の金融機関の住宅ローンの主流となっている金利タイプといえます。
すでに住宅ローンを利用されている方はこのタイプで住宅ローンを組んでいらっしゃる方も多いのではないでしょうか。
変動金利型は住宅ローンの金利が毎月あるいは半年ごとに見直しが行われます。
ただし、金利の見直しが行われるといっても、返済額の見直しは5年間ごとです。5年間は返済額が一定になり、その間の金利の変化は返済額中の元金充当額の増減で調整します。
この調整は、金利が上がれば利息部分が増え、金利が下がれば利息部分が減るという形になります。
また、変動金利型には「125%ルール」と呼ばれるものがあります。
これは、利用中に急激な金利の変動があっても、5年ごとの返済額見直しでは、それまでの返済額の1.25倍は超えないようにと定められているものです(元利均等返済の場合)。
この仕組みで行くと、金利が急上昇した際に、次回の金利見直しで適用金利が上がると、利息部分の金額が返済額を上回ってしまう可能性があります。この返済額を上回った部分の金額が「未払い利息」と呼ばれています。
未払い利息については全国銀行協会のホームページの説明が分かりやすいのでご案内しておきます。
変動金利型の場合、金利が上昇する中、こうした決まりで返済額が抑えられていき、最終の返済日に元金と利息が持ち越された場合は、最終の返済日に一括で返済することが原則です。さらに未払い利息がある場合はその分のローンが残る可能性もあります。
また、変動金利型で借り入れている場合は、いつでも固定期間選択型に移行することが可能です。
変動金利はどのように決まるのか?
先に見たように固定金利は長期金利を基に決められていましたが、変動金利はどのように決まるのでしょうか。
変動金利の指標は短期金利ですが、その代表は「無担保コールレート・オーバーナイト物」です。
これだけですと分かりにくいので、こちらも日銀のホームページを参照してみましょう。下記のように説明されています。
無担保コールレート(オーバーナイト物)とは、コール市場における無担保での資金貸借のうち、約定日に資金の受払を行い、翌営業日を返済期日とするものにかかる金利のことです。
引用:「無担保コールレート(オーバーナイト物)」とは何ですか? :日本銀行 Bank of Japan
これでも少々分かりにくいですね。
コール市場というのは、金融機関が非常に短期の資金(原則1ヶ月未満)の貸借を行う市場です。「呼べばこたえる」というのが、「コール」という名の由来です。
金融機関同士が1日という超短期で資金の貸し借りを担保無しで行う取引とお考えいただくとよいですね。
この「無担保コールレート・オーバーナイト物」は日銀の金融調節でコントロールされています。つまり、短期金利は日銀の金融政策の影響下にあるということです。
このことは、固定金利が長期金利に影響され、その長期金利は「市場の予測」という不確実なものの影響を大きく受けることを考えると非常に対照的と言ます。
日銀は法律で金融調整に当たっては、国民経済の発展のために物価の安定を図ることを決められています。
物価が安定するように政策を行わねばならない日銀が、急激に短期金利が2倍、3倍となるような政策を果たしてとるでしょうか。もしも、そんなことをすれば国民の生活は大混乱に陥ってしまいます。
これらのことから変動金利の特徴が見えてきますね。
変動金利型は危険?
住宅ローンの変動金利型については「金利が急上昇したら危険」とか「未払い利息が出るから危険」という話はよく耳にするかもしれません。
特に急激な金利の上昇リスクは、変動金利型を選択する際に気になるところです。
ですが、先に見たように、変動金利は短期金利が基になり、それは日銀が金融政策でコントロールしています。そして、その日銀は法律で物価の安定を図ることが規定されています。
これらのことから、急激に短期金利が上昇するリスクは今後も低いと考えられます。
もちろん、「将来に金利が上がるか、下がるか」という意味では、低い金利がいずれ上がる局面は来るでしょうが、それは急激に上がるわけではないと考えられますし、また、変動金利が上がるということは、景気もそれ相応に上向いて、国民の所得も増加している状態と考えられます。
さらに、今住宅ローンを借りていれば、来るべき短期金利が上昇する将来には住宅ローンの残高は減っている状態ということです。
また、「未払い利息が出るから危険」については、確かに変動金利型は未払い利息が出る仕組みになっています。
ですが、これも日銀について考えると実際起こる可能性が低いことが分かります。
つまり、多くの国民の住宅ローン未払い利息が出るような急激な短期金利を上昇させる金融政策を日銀が行うのかどうかという観点で考えることです。そのような事態になれば国民の経済は大混乱となり、やはり可能性は低いと言えます。
また、住宅ローンを貸している金融機関の立場から見ても、未払い利息(つまり金融機関がまだ受け取れていない利息)が出るような状況は好ましくありません。
変動金利型の選択のメリット
変動金利型の選択のメリットは、何といっても返済月額を低く抑えることができる点にあります。
また、変動金利型は住宅ローンの繰上返済による「返済期間短縮」「返済額削減」と組み合わせることで、よりその威力を発揮します。さらに、これらは将来の金利の上昇リスクを軽減することにもつながります。
ただし、いくら金利の急上昇は可能性が低いといっても、35年などの超長期的なスパンになれば、金利の上昇はあり得るわけですから、なるべく短期での返済プランに変動金利型はより向いていると言えます。
将来、特に長期的なスパンでの金利の動向は誰にも分かりません。
その意味では、固定金利型が「将来の安心を買っている」のに対して、変動金利型は「将来のリスクを負いながら低い金利のメリットを最大限享受する」ものと言えますね。
この場合の「リスク」がご自身にとって本当にリスクと言えるものなのかどうかは、各個人でご判断いただくことになります。
どの金利型を選べば良いのか
住宅ローンの固定金利型と変動金利型についてご説明しました。
どちらの金利型がよいかの結論を一言でいうと、「将来の安心を買う」のであれば固定金利型を、「リスクを承知で低い金利を享受する」のであれば変動金利型を利用する、ということになります。
つまり、住宅ローンを利用する方が「何を重視するのか」によって利用するべき金利タイプは変わります。
住宅ローンは最長で35年と非常に長い期間利用することになりますから、その間の人生設計も良く考慮してどちらの金利タイプを利用するかを決めましょう。
くれぐれも返済に無理が無いようにしてください。
もちろん、途中で借り換えなどもできますから、そうした手段も有効に活用しましょう。以下の記事もご覧ください。

特に住宅ローン借り換えの具体的な進め方は以下の記事でご説明しています。

なお、本記事では固定金利型と変動金利型を組み合わせた混合型(ミックス型)については説明を割愛しています。